CT Lab

第33章 レジストレーション

本章では、剛体・アフィン・変形位置合わせと類似度指標、マルチモーダル画像の融合を説明します。

レジストレーション(位置合わせ)は、2 枚以上の画像を同じ座標系に重ねる処理です。別の時刻に撮った画像を比べる(経過観察)、別の装置の画像を融合する(PET/CT の機能と構造、MR/CT の軟部と骨)、患者を標準脳に合わせる、といった場面で使われます。第19章で見た PET/CT の減弱補正も、PET と CT が同じ位置に重なっていることが前提でした。

位置合わせのループ

位置合わせは最適化問題として定式化されます。動かす画像(moving)に変換 TT をかけ、固定画像(fixed)との「似ている度合い」=類似度 SS を測り、SS が最大になるように TT を更新する、という反復です。変換の自由度で段階があります。剛体(回転+並進、2D で 3 自由度)は、同じ患者の硬い構造(頭蓋骨など)を合わせるのに使います。アフィン(+拡大・せん断)はさらに自由度が高く、**変形(deformable)**は場所ごとに動きを許して、呼吸や臓器の変形まで合わせます。

位置合わせループ固定T類似度ST を更新類似度 vs ずれずれMISSD整列

レジストレーションの反復処理(左)と、位置ずれに対する類似度指標の変化(右)。マルチモーダル画像では、位置が一致する付近で相互情報量 MI が最大になる。

類似度:何を「似ている」とするか

位置合わせの成否は、類似度の選び方で決まります。

  • SSD(差の二乗和):画素値の差の二乗を足す。小さいほど似ている。同じ装置・同じ輝度スケールの画像には素直で速いですが、輝度の対応が違うと使えません。
  • NCC(正規化相互相関):平均と分散で正規化した相関。輝度の線形な差(明るさ・コントラストのずれ)には強いですが、非線形な対応には弱いです。
  • 相互情報量(MI):両画像の同時ヒストグラムから、統計的な依存の強さを測ります。「片方の値が決まると、もう片方の値がどれだけ絞られるか」です。輝度の対応が非線形でも、位置が合っていれば同時ヒストグラムが集中して MI が大きくなります。

マルチモーダルには相互情報量

CT と MR、CT と PET では、同じ組織でも輝度の対応がまるで違います(CT で明るい骨は MR で暗い、など)。SSD や NCC は「明るさが対応する」ことを前提にするので、こうしたマルチモーダルでは破綻します。MI は輝度そのものではなく「対応の一貫性」を測るので、モダリティが違っても位置が合った点で最大になります。これが MI がマルチモーダルレジストレーションの定番である理由です。

シミュレーション:ずれた画像を合わせる

固定画像(CT 風)に、別モダリティ風で未知のずれを持つ動画像を重ねます。tx,tyt_x, t_y, 回転を動かして合わせてください。右の市松模様で、境界が段差なくつながれば整列しています。類似度を SSD・NCC・MI で切り替え、「自動整列」でその指標を最大化する変換を探します。輝度の対応が非線形なので、SSD や NCC ではうまく合わず、MI では素直に整列することを確かめてください。

固定画像(CT 風)

WL 0.500 / WW 1.00ドラッグで WL/WW 調整

動画像(変換後)

WL 0.500 / WW 1.00ドラッグで WL/WW 調整

市松模様の重ね合わせ

WL 0.500 / WW 1.00ドラッグで WL/WW 調整
相互情報量0.506

固定画像と、並進・回転を加えた異種モダリティ画像の位置合わせ。SSD、NCC、MI を用いた自動整列結果と類似度を比較する。

実務での位置合わせ

実際の臨床では、PET/CT や PET/MR のように、はじめから位置を合わせて撮る複合装置が普及しています(ハードウェアレジストレーション)。それでも、別々に撮った画像の融合、経過観察の差分、アトラスへの正規化、放射線治療の計画と照射の照合など、ソフトウェアによる位置合わせは欠かせません。変形レジストレーションや、近年は深層学習による高速・高精度な位置合わせも実用化されています。

この章の要点

レジストレーションは、変換 TT をかけた動画像と固定画像の類似度を最大化する最適化です。変換は剛体・アフィン・変形と自由度が上がります。類似度は、同一装置なら SSD や NCC で足りますが、輝度の対応が非線形なマルチモーダル(CT/MR・PET/CT)では、統計的依存を測る相互情報量(MI)が要ります。PET/CT の減弱補正や機能・構造の融合は、この位置合わせの上に成り立っています。

参考文献

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