第30章 周波数領域フィルタ
本章では、2 次元フーリエ変換にもとづく低域・高域・ノッチフィルタと、周期ノイズの除去を扱います。
画像を 2 次元フーリエ変換すると、なだらかな濃淡は低周波(スペクトルの中央)に、細かい模様やエッジ・ノイズは高周波(周辺)に分かれます。周波数ごとに重みを掛けてから逆変換すれば、空間で畳み込むのと同じ平滑化や強調を周波数領域で行えます。前章までのフィルタが画素近傍で計算する空間領域の処理だったのに対し、本章では同じ処理を周波数領域で表します。これは、CT のランプフィルタ(第4章)や MRI の 空間(第17章)と共通する表現です。
低域・高域・帯域
もっとも基本的なのは、周波数の半径で通す・通さないを決めるフィルタです。
- 低域通過(ローパス):低周波だけを通し、高周波を落とす。細部やノイズが消え、画像が滑らかになります。空間領域のガウシアン(第28章)と等価です。
- 高域通過(ハイパス):高周波だけを通し、低周波(なだらかな濃淡)を落とす。エッジや細部が強調され、平坦部は暗くなります。
- 帯域通過・帯域阻止:ある周波数帯だけを通す/落とす。
周波数領域フィルタのパイプラインと 3 種のマスク。上: 画像 → FFT → スペクトル → フィルタを掛ける → IFFT → 結果。下: 低域(中央を通す)・高域(周辺を通す)・ノッチ(スペクトル上の輝点だけ消す)のマスク。
周波数を不連続に遮断する理想フィルタでは、逆変換した像にリンギング(ギブス現象)が生じます。そのため、実際にはガウシアンなどのなだらかな遷移を用います。空間領域の畳み込みとフーリエ空間の乗算は、畳み込み定理によって数学的に等価です。大きなカーネルでは、FFT を用いるほうが高速な場合があります。
ノッチフィルタによる周期ノイズの除去
周波数領域では、周期的なノイズを特定の周波数成分として扱えます。一定周期の縞やモアレ、CT のリングアーチファクトのような周期構造は、スペクトル上では明るい点として現れます。この成分をガウシアン形状で減衰させるノッチフィルタを用いると、他の周波数成分への影響を抑えながら周期ノイズを除去できます。
シミュレーション:周期ノイズの除去
横縞を重ねたファントムを用意します。中央のスペクトルには、円の像による中央の広がりに加えて、縞に対応する明るい点が左右に見えます。フィルタを切り替えてください。ローパスは全体を滑らかにし、ハイパスはエッジを残して平坦部を落とします。ノッチを選ぶと、縞の点だけを消すので、円の像はほぼそのままで横縞だけが取れます。
元画像(横縞つき)
振幅スペクトル
フィルタ結果
横縞を含むファントム、その 2 次元スペクトル、フィルタ適用後の画像。ノッチフィルタは縞に対応するスペクトル上の成分を減衰させる。
この章の要点
2 次元フーリエ変換は、画像をなだらかな成分(低周波・中央)と細かい成分(高周波・周辺)に分けます。周波数ごとに重みを掛けて逆変換すれば、低域通過で平滑化、高域通過でエッジ強調ができ、空間領域の畳み込みと等価です(畳み込み定理)。理想フィルタはリンギングを生むので、なだらかな遷移を使います。周波数領域が特に強いのは周期ノイズの除去で、スペクトル上の輝点をノッチで消せば、縞やモアレを他を傷めずに取り除けます。
参考文献
- Gonzalez RC, Woods RE. Digital Image Processing, 4th ed. Pearson (2018) — 周波数領域フィルタの標準的な章。
- Bracewell RN. The Fourier Transform and Its Applications, 3rd ed. McGraw-Hill (2000).
- Brigham EO. The Fast Fourier Transform and Its Applications. Prentice Hall (1988).