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第31章 エッジ検出と勾配

本章では、Sobel フィルタ、ラプラシアン、Canny 法によるエッジ検出の仕組みを説明します。

エッジは、輝度が急に変化する領域です。臓器の輪郭、骨と軟部組織の境界、欠陥の縁などが該当します。エッジ検出は、セグメンテーション(第32章)、位置合わせ、特徴抽出の基礎となります。輝度が急に変化する位置では、1 階微分(勾配)が大きくなり、2 階微分(ラプラシアン)がゼロを横切ります。

エッジf輝度f'勾配f''ラプラシアンピークゼロ交差

1 次元の輝度ステップ f(上)、1 階微分 f'(中央)、2 階微分 f''(下)。エッジ位置は勾配のピークとラプラシアンのゼロ交差に対応する。

上の図は 1 次元で見た様子です。なめらかなステップ ff の勾配 ff' はエッジで山になり、ラプラシアン ff'' はエッジでゼロを横切ります。エッジは「勾配のピーク」あるいは「ラプラシアンのゼロ交差」として捉えられる、という 2 つの見方です。

Sobel とラプラシアン

2 次元では、勾配を縦横の 2 方向で測ります。Sobel フィルタは、3×33\times3 の小さなカーネルで横方向の勾配 gxg_x と縦方向の勾配 gyg_y を近似し、勾配強度 gx2+gy2\sqrt{g_x^2 + g_y^2} をエッジの強さとします。カーネルには軽い平滑化が組み込まれていて、ノイズにやや強くなっています。ラプラシアンは 2 階微分で、エッジでゼロを横切ります。ゼロ交差の位置を拾えばエッジになりますが、2 階微分はノイズに敏感なので、ふつうは先にガウシアンで平滑化します(LoG, Laplacian of Gaussian)。

勾配やラプラシアンをしきい値で 2 値化すればエッジ画像になりますが、素朴にやると、エッジが太くなったり、ノイズが偽のエッジになったりします。

Canny:細く、連続した輪郭

これらの弱点を抑えて、細く連続した輪郭を出すのが Canny 法です。次の段階を踏みます。

  1. 平滑化:ガウシアンでノイズを減らす。
  2. 勾配:Sobel で勾配強度と方向を求める。
  3. 非極大抑制:勾配方向に沿って局所的に最大でない画素を消し、太い稜線を 1 画素幅に細める。
  4. 二重しきい値:強いエッジ(高しきい値以上)と弱いエッジ(低しきい値以上)に分ける。
  5. ヒステリシス:弱いエッジのうち、強いエッジにつながっているものだけを採用する。

非極大抑制が輪郭を細くし、ヒステリシスがノイズ由来の孤立した弱エッジを捨てつつ本物の輪郭をつなぎます。この組み合わせで、単純なしきい値より格段にきれいなエッジが得られます。

シミュレーション:3 つの方法を比べる

少しノイズを乗せたファントムに、Sobel(勾配強度)・ラプラシアン(2 階微分の大きさ)・Canny をかけます。しきい値を動かすと、拾うエッジの量が変わります。Sobel は輪郭が太めで、しきい値を下げるとノイズが偽エッジとして現れます。Canny は非極大抑制で 1 画素幅に細まり、ヒステリシスでノイズを抑えた連続した輪郭を出します。エッジ画素の割合(edge %)も見てください。

元画像(ノイズ入り)

WL 0.500 / WW 1.00ドラッグで WL/WW 調整

エッジ検出結果

WL 0.500 / WW 1.00ドラッグで WL/WW 調整
エッジ画素の割合2.4%

ノイズを含むファントムに対する Sobel、ラプラシアン、Canny の出力。しきい値に応じたエッジ画素数と輪郭の連続性を比較する。

この章の要点

エッジは輝度の急変で、1 階微分(勾配)のピーク、または 2 階微分(ラプラシアン)のゼロ交差として捉えられます。Sobel は 3×33\times3 カーネルで勾配強度を出し、ラプラシアンはゼロ交差を与えますが、微分はノイズに弱いので平滑化と組み合わせます。Canny は、平滑化・勾配・非極大抑制・二重しきい値・ヒステリシスを重ねて、細く連続した輪郭を出す定番です。エッジはセグメンテーションや特徴抽出の入口になります。

参考文献

  • Canny J. A Computational Approach to Edge Detection. IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence 8, 679–698 (1986).
  • Marr D, Hildreth E. Theory of Edge Detection. Proceedings of the Royal Society B 207, 187–217 (1980) — LoG(ゼロ交差)。
  • Gonzalez RC, Woods RE. Digital Image Processing, 4th ed. Pearson (2018).

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