X線CTの概要
X線CT(X-ray Computed Tomography)とは、1967年にイギリスの Hounsfield らによって発明された、物体の断層画像(輪切り図)を得ることができる装置です。「非破壊」で物体の内部情報を得ることができるようになった衝撃は大きく、X線CT装置は医療・産業分野で急速に普及し、癌の早期発見の診断や、製品検査技術として活躍しています。 X線CT は、物体の周囲方向から X線を照射し、収集した投影データをコンピュータ上で再構成することで、その断層画像を生成します。きっと、以下のような画像を見たことがあると思います。
これは私自身の頭部 CT画像(頭部断層画像)ですが、多くの場合頭部を構成する要素は同じなので、似た画像を見ることも多いはずです。CT画像は基本的に PC 用のデータファイルとなっていますので、CT撮影をした場合病院にお願いすれば、CD-R にデータを焼いたものを 1,000円程度で購入することができます。興味があれば、ぜひ記念にもらっておきましょう。
X線CT とレントゲン撮影
X線CT はよくレントゲン撮影(X線撮影)と混同されますが、レントゲンは一方向からのみ X線を照射し、物体の透過像を得る技術です。X線CT は言い換えれば、様々な方向からレントゲン撮影を行い、その情報を用いて断層画像を計算する技術※です。すなわち、X線CT はレントゲン撮影の上位互換技術のように考えることができます。
※実際には X線強度の取得機構が異なるので、厳密に正しい表現ではありません。
X線CT と MRI
また、X線CT はよく MRI(magnetic Resonance Imaging: 核磁気共鳴画像法)とも混同されます。MRI は X線CT と同じく、物体の断層画像を得ることができます。しかし、MRI は強力な磁石を利用して、水素原子の状態の変化から断層画像を得る技術であり、X線CT とは原理が根本的に異なります。MRI と CT を比較すると以下のような利点・欠点があり、両者は場合によって使い分けられています。
- CT撮影は X線による被ばくのため回数等が制限されているが、MRI は被ばくしないため何度でも撮影できる。
- CT は撮影時間が数秒以下のように非常に短いが、MRI は 30 分以上のように非常に長くなることが多く、患者への精神的ストレスが大きい。
- CT では血管等を観察する場合は造影剤が必要になるが、MRI ではその必要が無いため、患者への身体的ストレスが小さい。
- CT では骨や肺などの観察は容易に行えるが、MRI では原理上それらの観察が非常に難しい。
- 被写体に金属が含まれる場合や刺青がある場合、CT ではアーチファクト(ノイズ)として画像に現れるが、MRI では強力な磁石を利用しているため撮影自体ができない。
- CT は MRI と比べて、一般的に得られる画像の解像度が高い。
本サイトでは、この X線CT装置に関連する技術について、紹介していきます。